株札を用いた新しいめくりの技法を考えてみました。名付けて"浮島(うきしま)"です。
 まだしっかり練られているとは云えませんが、興味をお持ちの方はお試しいただければ、と思います。
  ご注意:株札そのものについての解説はしておりませんので、株札とはどう云うものかご存知である事が前提です。
 
 
    創作技法 "浮島"   第2版    文責:CC
 
  以下、今後検討され得る可能性がある部分には※印を付けてあります(詳細は後述)。
 
   使用札
 株札40枚一組
 
   人数
 3人※
 
   札の点数
 赤ピン:15点
 玉四 :10点
 その他:各札の数値
  以上、総計240点
 
   席順と親の決め方
 札を山にして置き、参加者が任意の札を引いて、数の大きい順に反時計回りに座ります。数の最も大きかった人が最初の親となります。なお、同数の人がいた場合は、その人同士のみで引き直します。
 (以下、席順は、親から順に「親、胴二、ビキ」と呼称します。)
 
   札の配り方
 親が札を配りますが、その前に親は、札を胴二の前に置きます。
 胴二はそれを取り、良く切ってビキの前に置きます。
 ビキはそれを望みます。「望む」とは、適当に中程で分けて上下を入れ替える事ですが、この"浮島"の場合、中程で分けた際に、親が下の山の一番上の札を1枚引きます。この札は、引いた親も含め参加者の誰にも何の札か判らない様、伏せたまま別に置いておきます。その後ビキが上下を入れ替え、親の前に置きます。
 親は、札を手六場三に配ります※。「手六場三」とは、各人の手札が6枚ずつ、場札が3枚、と云う事で、具体的には、胴二→ビキ→親(自分)の順で各3枚、次いで場に2枚、また同じ順で各3枚、最後に場に1枚、と配ります。余った札は場の中央に伏せて置き、山札とします。
 なお、この時場札の3枚が全て同数値の札だった場合は、配り直しとして切る所からやり直します。また、1人の手札に同数値の札4枚が集まった場合も、手を開いて申告すれば配り直しとします(但し申告するか否かは任意です)。
 
   札を合わせる
 親から順に反時計回りに進行します。
 まず親が、自分の手札と場札を見比べ、同数値の札があれば合わせて(上へ重ねて置きます)取り、合う札が全くなければ、手札を1枚場に捨てます。
 次いで、山札の一番上を1枚めくり、場札に同数値の札があれば同じく合わせて取り、無ければ場に捨てます。
 取った札は、自分の手許に皆に見える様に並べます。
 なお、出す手札は自由なので、合う札があるのにわざと合わない札を捨てる事は可能ですが、合う札を出したのに取らずにおく事は出来ません。山札も、めくった札に合う札があれば必ず取らなければなりません。
 続いて胴二、ビキの順で同様にし、以下繰り返して計6巡し、全員が手札を全て使い切れば終了です。この時、場には札が1枚残っている事になります。
 
   浮き札
 最後に場に残った札は、配る前に別に伏せた札に合う、同数値の札の筈です。そして当然、この2枚以外の同数値の札が1組、誰かの手の中にある事になるのですが、実はこの4枚は、この後行われる精算で、他の札と違う特殊な扱いとなります。
 これを"浮き札"と称し、この技法の特徴であり、また技法名の由来でもあります。つまり、札が「4枚浮く」ので"浮島"とした訳です。
 
   出来役の精算※
 終了後、点数の精算に入ります。まずは出来役の役代を精算します。
 役が出来た人は、他の2人それぞれからその役の点数を受け取ります。つまり、手許に出来役の点数×2の点が入る事になります。
 出来役の種類と点数は以下の通りです。
  五双(ごそう)  80点
   1〜5の札がそれぞれ1組ずつ揃った役です。
   但し、1〜5のどれかひとつでも、2組(つまり4枚全て)
   揃っていればこの役は流れます。
   また、この役は、可能性として、同時に2人に出来る事も
   あり得ますが、その場合は赤ピンを持っている人の役が
   流れます。
  赤ダマ(あかだま)  40点
   赤ピン入りの1、玉四入りの4、及び9が各1組揃った役です。
   これは、五双と違い、構成する札の残り1組があっても
   役が成立します。
 上の2つの役は、構成札が最終的に浮いた場合、流れてしまいます。下の4つの役は、花合わせで云う所の"シマ"ですので、そもそも浮き札の数値では成立しません。
  二ゾロ(にぞろ)  20点
   2が4枚揃った役です。
   これは当然、五双とは重複出来ません。
  三太(さんた)  20点
   3が4枚揃った役です。
   これも当然、五双とは重複出来ません。
  六法(ろっぽう)  20点
   6が4枚揃った役です。
   これは、他のどの役とも重複出来ます。
  株シマ(かぶしま)  20点
   9が4枚揃った役です。
   これは、他のどの役とも重複出来る上、赤ダマとは
   札の兼用が可能です。
 
   札の点数の精算
 続いて取り札の点数を精算します。
 この技法は、札の点数の総計が240点で、3人で行う技法なので、80点を基準点とします※。
 精算の手順は、まず各人が、自分の取った札の点数を合計します。但しこの時、浮き札となった2枚(1組)を取っていた人(この人を"浮き持(うきもち)"と称します)は、その2枚を合計に入れる事は出来ません。そして、その上で更に浮き持の合計点から、浮き札4枚の合計点(これを"浮き代(うきだい)"と称します)、つまり浮き札が
  1の場合18点
  2の場合8点
  3の場合12点
  4の場合22点
  5の場合20点
  6の場合24点
  7の場合28点
  8の場合32点
  9の場合36点
  10の場合40点
をマイナスします。次いで、それ以外の2人の点数に、上記の通りの浮き代をそれぞれプラスします(2人に半分ずつ、ではなく2人にそれぞれです)※。そして、それから80点を除いて、そのプラスマイナスで点をやり取りします。この時点での全員の点を合計すると0になっている筈ですので、もし0にならなければ、何処かで計算を間違っている事になります。
 具体的に例示して説明(出来役については考えない事とします)しますと、例えばある回で甲、乙、丙の3人の内、丙が浮き持となり、浮き札が9だったとして、3人がそれぞれ
  甲=64点
  乙=46点
  丙=94点
になった場合、これを合計してみますと、204点です。これは、浮き代の分(36点)が入っていない為です。ここで、丙から更に浮き代36点をマイナスします。これにより
  甲=64点
  乙=46点
  丙=58点
となり、合計は168点です。ここで、甲、乙にそれぞれ36点ずつプラスすると
  甲=100点
  乙=82点
  丙=58点
で、合計が札の総計である240点に戻ります。そして、各人80点ずつ除いて
  甲=+20点
  乙=+2点
  丙=-22点
なので、丙が甲には20点、乙には2点払います。
 つまり、浮き札そのものの「浮いている点数」と、その同点数の「浮き持からマイナスされた点数」が、それぞれ他の2人に配分される、と云う事です。
 
   遊戯の終了
 以上を一回とし、その回の最多得点の人を新たな親として次の回に進み、任意の回数を繰り返して、最終的な得失点により勝敗を決め、遊戯を終了します。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   試行・検討の材料
 以上で"浮島"の遊び方の解説は終わりですが、ここでは、※印の部分について説明します。
 上記により、破綻なく遊んでみる事は(面白いかどうかは別にして)出来る筈で、自分としてはかなり満足のいく出来なので、これで"浮島"のルールは完成、のつもりなのですが、皆様が試しに遊んでみる中で、ひょっとしたら「こちらの方が面白い」と思われるかもしれないバリエーションが幾つか想定されます。
 それが、上記ルールの※印の部分なのですが、以下にそれを、雑然とではありますが、つらつらと書いてみようと思います。
 思い付くのは、上では3人の技法としていますが、サシ勝負、つまり2人の技法としたらどうなるのか、と云う事です(出・下りの導入については、どちらの場合も、導入するのもしないのもありだと考えられますので、ここでは検討の対象としません)
 実は※印の殆どが、ここを変える事により再検討される所なのですが、もし2人の技法とした場合、120点を基準点として互いに点数をやり取りするのは当然なのですが、そこでまず考え付くのが、「浮き代を浮き持からマイナスするか否か」と云う事です。
 ここで「マイナスする」とした場合、相手は2人でなく1人ですので、相手に加算される点数は「浮いている点数」+「マイナスされた点数」=浮き代の倍、となり、点数の移動がかなり大きくなります。また反対に、例えば3人の場合もマイナスをしない、と云う事も考えうるのですが、そうすると浮き持以外の2人に加算されるのは各人に浮き代の半分ずつ、です。
 上記ルールと「2人でマイナスなし」の場合は加算される点数は同じですが、浮き持にマイナスがあるのとないのとでは、スリル、緊張感が違ってくるとも思えます。
 この部分の想定されるルールのバリエーションを以下に列挙しますと、
  ・3人の技法として、マイナス点廃止
  ・2人の技法として、マイナス点廃止
  ・3人の技法として、マイナス点導入(上記ルール)
  ・2人の技法として、マイナス点導入
ですが、恐らく上から下に行くに従って穏やかなルールからダイナミックな激しいルールに移行すると思われます。これは結局、バランスとしてどの程度の勝負が好みか、と云う所に行き着くのかも知れません。遊戯として明らかにバランスが破綻している、となれば話は別ですが、そうでなければ、安定したルールで和やかに遊ぶのが好きか、激しいルールでダイナミックな点の上下を楽しむか、そのバランスをどの辺りに持ってくるか、と云う事になるかと思います。
 次に、札の配分です。3人の技法ならば、手六場三でまず異論の出ない所ではあると思います(手五場九なども考え得るのですが、手数が減るのでどうか、と思います)。が、仮に2人の技法とした場合、手八場七と手九場三の2つが考えられます。これはどちらがいいか、と云うと難しい所なので、ここではどちらとも云えませんが、ただ手八場七とした場合には、少し考えなければならないのが、配った際に場札に同数値の札が3枚揃ったらどうするのか、と云う部分です。
 花札などでの通常のめくり技法では、場に4枚同月札が揃えば配り直しですが、3枚の場合はヒコ札が適用されます。つまり、残り1枚の同月札でその3枚全てが取れる、と云う事ですが、"浮島"の場合、場に4枚は同じく配り直しで良いと思いますが、場に3枚同数値札が揃った時に、残り1枚の札が最初に伏せられている可能性を考慮しなければなりません。こうなると、その場札の3枚は最初から最後まで全く動かず、浮き札が遊戯に関わる事が全くなくなり、"浮島"の特徴が失われて淡々としためくり技法になってしまいます(実は、上記ルールにおいてヒコ札を採用せず「場札の3枚が全て同数値の札だった場合は配り直し」としているのはこの為でもあります)。その為、「場に4枚同数値札が揃った場合は配り直し」ではなく「場に3枚以上同数値札が揃った場合は配り直し」とするべきかと思います。
 最後に出来役について。そもそも上記ルールの出来役は、私が取捨選択して決定したものです。これが出来役として適当か、他にもっと良い役が考え得る、役の数が少ない(あるいは多い)、等々、文句を言おうと思えば幾らでも言えるのは当然です。こちらとしても役の内容を色々いじって遊ぶのに異論などあろう筈もなく、どんどんやっていただいて構いません。と云うより、それで技法がより良く進化するなら大歓迎です。その際に、ひょっとしたら参考になるかも知れない(ならないかも知れませんが)事を以下に書きます。
 まず、3人の技法と2人の技法では、2人の方が役が出来易い、と云う事です。これは、同枚数の札を3人で取り合うより2人で取り合う方が手許に来るであろう枚数が多くなるので当然です。"こいこい"の出来役があれだけの数があるのは、札を使い切らず途中で遊戯を打ち切る事が出来る為です。札を使い切る2人でのめくり技法である"むし"を見れば、出来役は僅か4つしかありません。また、例え3人の技法でも、不釣り合いに役の数を増やせばバランスが崩れる可能性はあります。
 上記ルールでは、出来役を6つに設定しています。前述の理由で「あまり増やし過ぎても・・・」と思いこれだけにしてあるのですが、もし2人の技法として遊ぶなら、"シマ"役の数を減らした方が良いかも知れません。勿論、「役がお互いにバンバン出来た方が面白い」と云うのも考え方としてありですので、これは傾向を述べたのみで、一意見でしかありません。
 ところでその"シマ"の役なのですが、これは当然1〜10のどの数値でも役として設定出来ます。その中で上記4つとしたのは色々と検討した結果ですが、言ってしまえば実は絶対的な必然性はありません。内情を少しバラしますと、"花合わせ"や"むし"の役では、藤シマ、桐シマ、そして"むし"にはありませんが雨シマ、があり、ローカルルールには他の月もありますが大体この3つが有名所と言って良いと思います。ただ、"浮島"において設定した株札各々の札の点数と花札の各札の点数では、並び方が全く違います。これは、株札が1スートになっている為、かつ遊ぶのに判り易くする為、一部例外を除いて札の数値を点数としたので当然ではあるのですが、ここで問題となるのは、その数値の札が4枚揃った時の札そのものの点数が、数値によって全く違う、と云う事です。
 例えば花札ならば、計17点が7種、23点が1種、27点が2種、32点が1種、36点が1種なのですが、今回の設定では、上記ルール内にある通り、下は8点から上は40点までの幅があります。そこで、果たして"シマ"役とするには札の点数が多い方にするべきか少ない方にするべきか悩みました。札の点数を補う為少ない方にするのか、点差を激しくしてダイナミックな技法にする為多い方にするのか、と云う事です。
 ただ、花札を見てみますと、藤の4枚は計17点、桐ならば23点、柳に至っては36点です。今回はこれに倣って、上から下まで満遍なく配置してみました。内訳を示すと、少ない方に2、中くらいに1、多い方に1、です。更に他の方向からの内訳として、打ち消し合う役があるシマ2、打ち消し合う役がないシマ2(内、兼用札がある役とない役各1)という事も考え合わせてみました。
 こんな感じで設定した"シマ"の役なのですが、当然「他の数値にした方が良い」と云うご意見もあるかと思います。それについては、前述の通りご自由にやってみていただければ、より良いものが出来上がるかも知れません。
 
 以上で説明を終わります。ご参考になれば幸いですが、そんなにややこしい事は考えずに、さっと遊んで楽しんでいただければ、と云うのが本音です。色々試してみるにしても、楽しくやっていただけるに越した事はございません。